空飛ぶクジラの物語(第4話)

空飛ぶクジラと朝日

わたしは3日前に月から帰ってきた。
月への旅で疲れ果て、3日間、海の中で眠っていた。

今日、目が覚めて思ったのは、
「月へ行ったのは、夢だったのではないか」ということだ。

試しに水中から朝焼けの海面に向かってジャンプしてみた。

飛べた。
拍子抜けするほど簡単に、海上に出ることが出来た。

それどころか、そのまま空に向かって上昇した。
そして、朝日を浴びながら自由に空を遊泳した。
やはり夢ではなかったのだ。

憧れの月は、ただの寂寞(せきばく)とした星だった。
しかし、月へ行くためにした努力は、無駄ではなかった。

わたしは知った。
夢は現実になるということ、そして、現実にならなかったとしても、その過程でたくさんの大切なことを学べるということを。

月に憧れていた普通のクジラは、いま、空を飛べるクジラになった。
空を飛ぶことで、わたしの世界は一変する。

地球の本当の美しさ、そして、本当の悲しみ、そのすべてをこの目で見ることが出来るようになった。

そして、あらためて自分の住んでいる環境の素晴らしさを知ることが出来る。

わたしは感謝している。

この地球に、そして、わたしに憧れの存在を与えてくれた神様に。

 

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